特集:50歳以上の7割が感染しているといわれる「ピロリ菌」



- ピロリ菌感染を調べる検査には、内視鏡を必要とする検査、および必要としない検査があります。
(1)内視鏡を必要としない検査
● ピロリ菌抗体測定法 ・・・ 血中や尿におけるピロリ菌に対する抗体の有無を調べます。
● 尿素呼気試験 ・・・ ピロリ菌がウレアーゼという尿素をアンモニアと二酸化炭素に
分解する酵素をもつことを利用し、特殊な尿素を飲んで呼気の中の二酸化炭素を調べます。
● 便中抗原測定法 ・・・ 糞便中のピロリ菌抗原の有無を調べます。
(2)内視鏡による検査
● 迅速ウレアーゼ試験 ・・・ 胃粘膜を採取し、ウレアーゼの活性を調べます。
● 培養法 ・・・ 胃粘膜から採取した細菌を培養して調べます。
● 鏡検法 ・・・ 内視鏡下で採取した組織を顕微鏡で調べます。

- 現在最も代表的な治療法は「3剤併用療法」といわれるもので、2種類の抗生物質(抗菌薬=アモキシシリン、クラリスロマイシン)と胃酸を抑えるプロトンポンプ阻害薬(PPI)を1日2回、1週間内服します。これで約7~8割は除菌できますが、年々クラリスロマイシンの耐性菌が増加して除菌率が低下し、最近では約3割が除菌に失敗することが問題になっています。初回の除菌に失敗した場合、再度同じ3剤を使った除菌治療をしても大きな効果は期待できません。日本ヘリコバクター学会は2003年に定めたガイドラインで、耐性菌対策としてクラリスロマイシンの代わりにメトロニダゾールを使う3剤併用療法を2次療法として推奨しています。この治療法の成功率は約9割に達しています。
ピロリ菌感染検査と除菌療法は、レントゲンか内視鏡検査で、胃潰瘍または十二指腸潰瘍と病名が診断された場合に限って、2000年より保険適用となっています。「潰瘍の疑いがある」、「慢性胃炎」、「胃がん予防のために」などという場合は保険適用になりません。また、メトロニダゾールを使う2次除菌は保険適応外でしたが、学会の強い要請を受けて厚生労働省は、安全性を調べるための臨床試験をしない「公知承認」という手続きによって、メーカーの申請からわずか1年で保険適応を認めました(2007年8月)。
学会は、さらに除菌治療が望ましいとされる疾患――「胃MALTリンパ腫」や「萎縮性胃炎」、「胃のポリープ」などや、ピロリ菌感染が関連すると思われる疾患――「特発性血小板減少性紫斑病」、「慢性蕁麻疹」、「鉄欠乏性貧血」、「冠動脈疾患」などに対しても、除菌治療が保険適応になることを活動目標のひとつに掲げています。
なお3剤併用除菌療法にはメリットとデメリットがあります。
【メリット】
・胃潰瘍の7~8割が改善し、潰瘍の再発を有意に抑制する
・除菌によって、胃がん発生を抑制する。
・特発性血小板減少紫斑病の場合、除菌のよって6割前後で血小板数の増加が認められる。
【デメリット】
・耐性菌の蔓延を助長する可能性がある。
・副作用として、軟便・下痢・口中の苦味・発疹・肝機能障害が起こる場合がある。
・慢性胃炎の中には除菌後も症状改善しない例が多数報告されている。
・除菌後、胃粘膜が回復して胃酸が強くなるため3~19%が逆流性食道炎が発生したという報告がある。
このため、ピロリ菌が発見されただけで症状がない場合は除菌したほうがいいかどうか、議論の分かれるところであり、症状や期待される効果、副作用、費用などを考えて個別に判断することになります。また、「プロバイオティクス(乳酸菌などの生菌を医療分野に利用すること)」の研究が盛んになり、現在までに プロバイオティクスを利用したピロリ菌抑制効果、腸内環境改善効果のほかにも、発がん予防、アレルギー改善や免疫賦活作用などが発表されています。

PAGE TOP