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特集:50歳以上の7割が感染しているといわれる「ピロリ菌」

世界を席巻するピロリ菌

ピロリ菌と日本人
日本人は先進国の中でも感染者が多い!
  ピロリ菌陽性者(感染者)は一般的に発展途上国に多く見られ、欧米先進国では少ないとされています。その中で日本は、先進国の中でも著しく感染者が多く(図)、50歳以上では7割が感染しているという統計が出されています。
 気になる感染経路は、主に保菌者の糞便や嘔吐物から環境に放出され、井戸水や川、池、ハエ、動物の糞便などを通して、ヒトに摂取されると考えられています。 先進国と発展途上国における年代別 H. Pylori 感染率

感染者と年齢の関係について
  日本での菌陽性者は、年齢が高くなるにつれて増加し、年齢が低くなるにつれて減少します(図)。最近では20歳以下の菌陽性者はほとんど見られなくなりました。これは、昭和30年頃から上下水道の整備が全国的に進んだためと考えられています。
 近年では小児期のピロリ菌感染による疾患(胃・十二指腸潰瘍、鉄欠乏性貧血)は、臨床現場でほとんど見られなくなりました。ちなみに、東アジアの発展途上国では年齢が 低い層でも菌陽性率が高いと報告されています。これは、ピロリ菌感染が上下水道の不整備に起因し、幼児期に成立することを裏付けています。

日本人の各年齢層によるピロリ菌感染率
ピロリ菌とアジア
東アジアのピロリ菌株は胃がんとの関連性が高い(1)
【東アジア型の疾患】
 ピロリ菌感染による胃炎が胃体部(食道に近い部分)に広がり、胃粘膜萎縮が生じます。このため、胃液分泌や消化機能が低下しやすく、胃もたれ、吐き気、嘔吐、食欲不振が起こります。また、このタイプは胃がんを発生させやすいのが特徴です。  ピロリ菌陽性率に男女差は認められていませんが、実際、胃がんに男性患者が多いのは、菌保有に喫煙や飲酒などの環境や生活習慣因子が加わると考えられています。

 アジアにおけるピロリ菌の感染率は、各国の戦後の経済復興の度合いを表しています。第二次世界大戦後にインフラを整備し、衛生環境が改善された香港・シンガポールなどの国は、日本とほぼ同じ感染率ですが、インドやベトナムなどは若年層が極めて高い感染率にあります。
 しかし、日本や欧米とは違ってピロリ菌除菌治療への着手が遅れているため、アジア各国が手を組んで対策ネットワークを構築することが求められています。

東アジアのピロリ菌株は胃がんとの関連性が高い(2)
東アジア型ピロリ菌の特徴】
 福井大学医学部第二内科(現・神戸大学医学部教授)の東健(あずまたけし)医師の論文報告によると東アジア型のピロリ菌は、CagA(細胞空胞化毒素関連たんぱくA;病原因子のひとつ)を有していて、ピロリ菌のこのタイプの株は病原性が強く、十二指腸潰瘍や胃がんとの関連が強いと考えられています。そして、日本ではほとんどのピロリ菌がこれに該当します。

 東アジア型のピロリ菌は、胃に感染すると注射針のようなもので粘膜の中にCagAを注入します。CagAは胃粘膜上皮細胞内でチロシンリン酸化を受け、細胞の分化や増殖に重要な役割を担う、細胞質内脱リン酸化酵素SHP-2と特異的に結合し、細胞の異常増殖に作用します。
  東アジア型のCagAは欧米型に比べ、SHP-2と結合する力が強く、東アジア型のCagAを有するピロリ菌の感染は、胃粘膜萎縮や胃がんに関与することが明らかになりました。
  さらに、CagAの多型(たんぱく質の型の違い)の国際分布と胃がん死亡率を検討した結果、東アジア型のCagAの頻度と胃がん死亡率の相関が認められたことも発表されています。

ピロリ菌と世界
欧米のピロリ菌株は十二指腸潰瘍との関連性が強い
【欧米型の疾患】
 欧米先進国では東アジアほど菌陽性者が多くありませんが、菌株が異なり、発生する疾患に違いがあります。ピロリ感染による胃炎が胃前庭部(十二指腸に近い側)に起こり、胃酸分泌が上昇しやすいのが特徴で、十二指腸潰瘍発症につながっています。
5.ピロリ菌をやっつけろ
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