
感染者と年齢の関係について
日本での菌陽性者は、年齢が高くなるにつれて増加し、年齢が低くなるにつれて減少します(図)。最近では20歳以下の菌陽性者はほとんど見られなくなりました。これは、昭和30年頃から上下水道の整備が全国的に進んだためと考えられています。
近年では小児期のピロリ菌感染による疾患(胃・十二指腸潰瘍、鉄欠乏性貧血)は、臨床現場でほとんど見られなくなりました。ちなみに、東アジアの発展途上国では年齢が 低い層でも菌陽性率が高いと報告されています。これは、ピロリ菌感染が上下水道の不整備に起因し、幼児期に成立することを裏付けています。
東アジアのピロリ菌株は胃がんとの関連性が高い(2)
東アジア型ピロリ菌の特徴】
福井大学医学部第二内科(現・神戸大学医学部教授)の東健(あずまたけし)医師の論文報告によると東アジア型のピロリ菌は、CagA(細胞空胞化毒素関連たんぱくA;病原因子のひとつ)を有していて、ピロリ菌のこのタイプの株は病原性が強く、十二指腸潰瘍や胃がんとの関連が強いと考えられています。そして、日本ではほとんどのピロリ菌がこれに該当します。
東アジア型のピロリ菌は、胃に感染すると注射針のようなもので粘膜の中にCagAを注入します。CagAは胃粘膜上皮細胞内でチロシンリン酸化を受け、細胞の分化や増殖に重要な役割を担う、細胞質内脱リン酸化酵素SHP-2と特異的に結合し、細胞の異常増殖に作用します。
東アジア型のCagAは欧米型に比べ、SHP-2と結合する力が強く、東アジア型のCagAを有するピロリ菌の感染は、胃粘膜萎縮や胃がんに関与することが明らかになりました。
さらに、CagAの多型(たんぱく質の型の違い)の国際分布と胃がん死亡率を検討した結果、東アジア型のCagAの頻度と胃がん死亡率の相関が認められたことも発表されています。